〜マークX赤道儀システム〜

・その先に狙うは「彗星」　

　それまで小学生の頃に父親に買ってもらったカートン光学70mm経緯台でがんばっていたのを、ハレー彗星の回帰を翌年に控えた1985年。ハレー彗星を自分で写真に撮りたい…それが赤道儀の購入に踏み切るきっかけでした。予算はお正月に集まったお年玉（笑）親からバイトの許されない高校生の貴重な財源をすべて投じるわけですから、ものすごく考え抜きました(^^;;;
　目的を主に彗星と星野の撮影用として、重点をおいたのは次の4点。

・鏡筒はとりあえず考えない。ただし、いつか購入して載せることは考慮に入れる。
・一人で持ち運べるもの。移動手段が電車・バス・徒歩（笑）でも持ち歩けるもの。
・モータードライブは必須。
・予算の許す範囲内で追尾精度のできるだけ高いもの。
…そして。可能ならば、将来ある程度までシステムのステップアップが可能なもの。 　

　購入の決め手となったのは、最小限のシステム…ベースモデルとモータードライブの購入だけでガイド撮影が可能になること。そしてその年の夏に発表された「MX-28コメットトラッカー」の存在でした。星空の中をどんどん移動していく彗星を追いかけるには、彗星核ガイドやメトカーフガイドでこまめにガイドしなくてはならないのですが…彗星がどのくらい動くのかを計算して数値を入力し、両軸モータードライブの追尾速度を自由に変えられる「コメットトラッカー」は、当時の小型赤道儀用としては画期的でした。将来、コメットトラッキングとコメットハンティングをするには、この機能はすごく生きる！と喜んだもんです。値段がハチャメチャ高かったので（MX-28だけで\79,000）、いきなりこれを買えるわけがなく（笑）「いつかはコメットトラッカー」を頭に入れて少しずつシステムを揃えていこうと決めたわけです。

　あれから20年以上。両軸モータードライブも彗星追尾できる機能も、今の赤道儀では当たり前のようになりましたが、いまだにシステムを揃えつつ使い慣れたマークＸシステムで今も星空を、彗星を追いかけています。

　でも…コメットトラッカーはまだ手に入れていません(笑）。

左上：星の写真を撮りに…。
キャリングケースにショルダーベルトが付いて
いれば、運ぶのがもっと楽になるんですけど。

左：キャリングケースの中はこういう配置。
MX-2 赤緯軸を一緒に収められるように、
一部手を加えてあります。
オリジナル状態では赤緯軸は入りません。
　

・MX-1　 ベースモデル
・MX-4　 観測装置取付板
・MX-27 モータードライブＰ型
・バッテリー
（単１×８本、又は12Vバッテリー）
・カメラ用三脚 　

　ポータブル赤道儀としての最小限のシステム構成です。画像では専用キャリングケースを使っていますが、ケースを使わなくても服やバスタオル、プチプチマットでくるんでザックに入れれば、一式背中に背負えてしまいます。
　重さは MX-1 ベースモデルとMX-27 モータードライブP型合わせて約3kg、キャリングケースに自由雲台１個と一緒に収納した場合は、全体で6kg（いずれも実測値）です。

　MX-3 架台とMX-1 ベースモデル（極軸部）を分けて、極軸部だけでポータブル赤道儀として使えるのがマークＸ最大の特徴ですね。私が購入した時は、同様の作りの高橋製作所のSPACE BOY赤道儀やカートン光学のスーパーノヴァ赤道儀もありましたが。

　ちなみに、MX-27モータードライブＰ型と専用キャリングケースはハレー彗星回帰の直前に「キャリングケースセット」として販売された時から登場したもので、キャリングケースも1986年1月の価格表には「MX-90」のMXナンバーが付けられています。

　この構成で約2年ほどがんばりました（笑）三脚は後にビクセン・フォトガイドＳ星野写真儀の脚部に代えました。 　

　 当時販売されていた高橋製作所SPACE BOY赤道儀用の明視野照明装置（Ｐライト）は、取付方法が極軸体プレートに開いている極望の穴に前から差し込むだけの簡単なものでした。そこで、マークＸの極軸望遠鏡のふたにドリルで直径１９ミリの開口部を作り、明視野照明装置を差し込んで瞬間接着剤で接着してあるだけです。 ふたに開口部を抜く作業はボール盤があれば１０分もかからないと思われますが、家庭用のドリルでもおそらく３０分かからないでしょう。

　これをUPするにあたって当時のことを色々思い出してみました。当時のアトム横浜店で中川さんに相談した際、確か最初はビクセン・SP（スーパーポラリス）赤道儀用の照明装置を流用してはどうか？と勧められたのを、カッコワルイという理由で（^ ^;）高橋製作所P-2赤道儀用照明装置でできないかとわがまま言ったんだっけ（笑）。
　P-2赤道儀用照明装置だとねじ込みのピッチを切り直さなくてはならないため、結局極軸望遠鏡のふたに穴を開けてSPACE BOY赤道儀用Ｐライトを差し込み、瞬着でくっつけたと聞きました。

観測装置取付板にSLIKプレート2×2つ取り付け、カメラ4台を同架。
三脚架台はビクセンフォトガイド2と同じ物を使用 　

　載せました、この時は（笑）。とにかくできるだけ広い範囲を撮るべく、カメラを総動員した結果…3台までもが霜が降りてアウト。広角レンズを付けたニコンFM10だけが最後まで生き残りました…って、なんか違うぞ（^^；；；）

　回転シャッター付けたくなりますが…さすがにそれはNGですね（笑）。 　

　マークＸを購入する時に決め手となったもうひとつの理由がこれ…モータードライブ。メーカー純正のものは当時4種類ありました（MX-25 モータードライブAC、MX-26 モータードライブDC、MX-27 モータードライブP型、MX-28 コメットトラッカー）。さらにMX-20 減速微動装置というアイテムもありましたが…私が最初に目を付けたのはサード・パーティー製の安くて実績があるモータードライブでした。

1：ビクセン　MD-5改（「星の家」製）

　ビクセン「ニューポラリス赤道儀」用MD-5モータードライブの水晶発振器を代えることで、ウォームギア歯数の違うマークＸで使えるようにした「ペンション星の家」製のモータードライブ。当時マークＸをポータブル赤道儀として使う方々には定番だったのでは？。純正品で一番安かったMX-27 より、実売価格でさらに1万円近く安かった覚えがあります。おかげで無事予算内に収まりました。
　 MD-5からの変更点は水晶発振器と、マークＸに取り付けるためのアタッチメント金具＆長ボルトです。 ポタ赤用として使用してみて追尾には何の問題もなく、単2電池×6本で駆動するので便利でした。 さすがに今は予備役。でも、ちゃんと使えます。

　2000年夏。すでに生産中止となっていて手に入れるのが不可能と思っていたマークＸ関連パーツの在庫を、原村星祭りで五藤光学が出すという情報を友人から得、一路八ヶ岳へ。考えてみれば、それまで五藤光学に直接在庫の確認をしたことがなかった(^^；；；新しい仕事についたばかりと言うこともあって2日目の朝から参加では、もう売り切れてしまったかな…と思っていたところで、これを見つけました。

2：五藤光学　6.5cm&8cm赤道儀用駆動装置

　学校などに納入されていた、極軸望遠鏡の無い6.5cm&8cm赤道儀用のモータードライブ。ご覧の通り、色を除けばMX-27 モータードライブP型とほぼ同じです。ただし、モータードライブを極軸部に取り付ける部品が違うため、マークＸ用のものと取り替えないと使えません。確認してもらったところ、後日幸いにも部品が見つかって送っていただきました。色違いでも…純正の「新品」が手に入ったのは大きな収穫でした（笑）
　駆動は恒星時・倍速・停止の最小限3機能のみ。電源は単1電池×8本、又はDC12Vバッテリー。付属品は極軸取付部品とバッテリー用電源コード（クリップ付）。マークＸ用の電池ケースも同時に購入(^^)v これで、しし座流星群を狙いました。

　翌年…2001年の夏。再び原村星祭りで最後の在庫が出るという情報に、またもや八ヶ岳へ。そこで見つけたのが、これ。

3：五藤光学　6.5cm赤道儀（マークＸ）用駆動装置

　生産中止になる直前のマークＸ用モータードライブは、ハンドボックス側の機能を倍速・停止のスイッチだけとして、モータードライブ本体に機能を集約したものとなりました。ON/OFFスイッチや駆動確認のダイオードを本体に組み込み、電源コードも本体に直接つなぎます。本体の形も大きく変わり、本体そのもので支持ボルトをくわえ込むようになっています。MXナンバーが付けられていたのかどうか、この時に伺ったはずなのですが忘れてしまって…手元にも資料が無いのでわかりません…。ご存じの方、ご教示いただければ幸いです。
　 このモータードライブはその 「学校納入色違いバージョン」です。
　駆動は2：と同じく恒星時・倍速・停止の最小限3機能のみ。電源は単1電池×8本、又はDC12Vバッテリー。付属品は取付支持ボルトとバッテリー用電源コード（クリップ付）です。

　このモータードライブを購入し、その場でブースの五藤光学の方とコメットトラッカーの事を話していると、その会話に加わってきた方が…百武祐司さんでした。びっくりしました！現役コメットハンターの方と直接お話しできるなんて、めったにない機会でしたから(^^)。
　百武さんサイン入りの百武彗星ポスターをいただき（笑）色々お話しさせていただきました。捜索の方法とか…ではなくて（爆）専門的なお話よりも「外国に行くのは若いうちだよ」とか「自分にできる範囲内でできる事をすれば良い」なんていう普通のお話をうかがいました。逆にそれがなぜか嬉しかったですね。

　…そして、それが百武さんと最初で最後の出会いとなってしまったのが今でも残念です。このモータードライブは、その時の思い出の品でもあるのです。